建設業の人手不足について
1-建設業の人手不足の現状と原因
1-1. 建設業の人手不足の統計データ
どの職種も同じかもしれませんが、日本の建設業界は深刻な人手不足に陥っています。
厚生労働省の統計によると、建設業の有効求人倍率は2024年現在で4倍を超え、他業種と比べても極めて高い水準にあります。つまり、1人の求職者に対して4件以上の求人が存在している状況です。特に現場作業員や専門技術者の不足が顕著で、地方では人手不足が原因で建設プロジェクトが進まないケースも増加しているそうです。
1-2. 高齢化と若年層の減少
建設業界の労働者の平均年齢は50歳を超え、特に現場作業員では60歳以上の割合が急増しています。一方で、建設業に新規参入する若年層は少なく、世代交代が進まない状況です。この原因には、建設業界が持つ「3K」(きつい・汚い・危険)というイメージや、不規則な労働時間、比較的低い給与水準が挙げられます。
また、都市部への人口集中に伴い、地方の若者が建設業以外の職種を選ぶ傾向も強まっています。その結果、地方の中小建設業者ほど人手不足が深刻化し、地域インフラ整備が滞るという悪循環が発生しています。
10年後には50%が50歳以上になるような記事もあり、いよいよ建設職人の若手も少なくなります。
それよりもその若手に教える人が減っていくでしょうから余計深刻です。
1-3. 業界のイメージや待遇の課題
建設業は社会インフラを支える重要な産業であるにもかかわらず、若者にとってはまだまだ魅力的な職業とは見なされていません。
特に労働条件の厳しさやキャリアパスの不透明さが敬遠される理由の一つです。
また、IT業界や金融業界のように「デジタル技術」や「革新的な働き方」といったイメージが薄いである点も、若者の関心を引きにくいです。
このイメージの改善は、単に人手不足を解消するだけでなく、建設業界全体の持続を高めるためにも必要不可欠だと思います。
2-人手不足が建設業界に与える影響
2-1. 工事の遅延やコスト増大
人手不足が最も顕著に表れるのは、建設工事の遅延やコストの増大です。例えば、地方自治体が発注するインフラ整備事業において、入札に応募する建設業者が不足し、予定していたスケジュール通りに進まないケースが増えています。
また、限られた人材を確保するために、人件費が高騰しています。特に専門技術者の賃金は急速に上昇しており、それがプロジェクト全体のコスト増加につながっています。このような状況は、中小規模の建設会社にとっては特に厳しいものとなり、結果として倒産のリスクも高まっています。
単に給料が上がったからと言って魅力的にみられる事ではないような気がします。
2-2. 地域経済やインフラ整備への影響
建設業は地域経済を支える基盤産業の一つです。しかし、人手不足によってインフラ整備が進まない場合、地域全体の経済活動にも悪影響を及ぼします。たとえば、道路や橋梁の老朽化対策が遅れると、物流や観光といった他産業にも波及的な影響が出ます。
また、災害時の復旧作業でも人手不足の問題が浮き彫りになります。地震や台風などの自然災害が頻発する日本において、迅速な復旧作業が困難になることは社会的リスクを高める要因の一つです。
2-3. 将来の建設需要を見据えた懸念
日本では都市部の再開発やインフラの再整備といった建設需要が今後も増加する見込みです。しかし、これに対応するための人材が不足している現状では、今後の建設業界全体が停滞する可能性があります。特に、国際イベントや新たな都市計画が進む中で、需要に応じた労働力が確保できなければ、国際競争力の低下にもつながりかねません。
さらに、人口減少が進む中で外国人労働者の活用も重要な課題となっていますが、言語や文化の壁、法的な手続きの複雑さなどが新たなハードルとなっています。これらの課題を解決しなければ、将来的な建設需要に対応することは難しいでしょう。
3-技術革新がもたらす建設業の未来
3-1. 建設現場でのAIの活用
建設業界では、AI(人工知能)やロボティクスの導入が進んでいます。これらの技術は、人手不足を補うだけでなく、作業効率や安全性を大幅に向上させる可能性を秘めています。
例えば、AIを活用した建設プロジェクトでは、施工計画の最適化が行われています。AIが現場の状況や資材の動きをリアルタイムで分析し、効率的な作業手順を提案することで、無駄を減らし作業のスピードを上げています。また、ロボットによる自動化も進んでおり、例えば壁の塗装やブロック積みといった作業を自動化する未来もそう遠くないかもしれません。
さらに、ドローンによる現場監視や測量も需要化されてます。これにより、高所や危険箇所の調査を人間が行う必要がなくなり、安全性が向上するだけでなく、作業効率も向上します。
3-2. BIMやIoT技術の導入
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、建設プロジェクトにおいて重要な役割を果たしています。BIMとは、建物やインフラの設計・施工・維持管理に関する情報を3Dモデルで統合管理する技術です。これにより、設計段階から施工段階まで、関係者全員が同じデータを共有できるため、ミスや手戻りを大幅に削減することが可能です。
また、IoT(モノのインターネット)技術も建設現場に変革をもたらしています。例えば、建設機械にセンサーを取り付けて稼働状況をモニタリングすることで、機器の効率的な運用が可能になります。さらには、作業員のヘルメットに取り付けたセンサーが体調や動きを検知し、安全性を確保する取り組みも進んでいます。
こうした技術導入により職人や監督員の人で不足を解消しようとする動きはすでに出てきています。
3-3. 技術革新がもたらす労働力不足の解消
これらの技術革新は、建設業界の労働力不足を補う強力な手段となります。特にAIやロボット技術は、単純作業を自動化するだけでなく、複雑な作業を人間と協力して行える段階に進化しており、現場の生産性を飛躍的に向上させることができます。
さらに、こうした技術の導入により、建設業界の「3K」イメージを刷新することも期待されています。デジタル技術の活用は、建設業界を「スマート」かつ「革新的」な業界として再定義し、若い世代や技術志向の人材を引きつけるきっかけになるでしょう。
ただし結局は人間が操作する事によって、ロボの数=人間の数、また監視する者の数が比例してしまうとただただ忙しくなるだけにも感じます。
4-働き方改革と人材育成の取り組み
4-1. 建設業界における働き方改革の動向
近年進められている「働き方改革」の影響は建設業界にも広がっています。長時間労働が常態化していた建設現場では、労働時間の短縮や休日確保が進められており、2024年には建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。これにより、労働環境の改善が期待されているものの、現場における生産性向上が不可欠となっています。
さらに、ICT(情報通信技術)やIoTの活用により、遠隔地から施工管理を行う「テレワーク施工管理」も一部で導入されています。これにより、現場に足を運ばずとも効率的に業務を進める仕組みが構築されつつあります。
ただそうした技術を導入できる資本力が必要なので、元々儲かってもいない建設専門工事業にとっては負担でしかないかもしれません。
「工期」が決まっている以上、悪天候や予想外のトラブルなどで工期遅延した際は、これまで同様に職人を寄せ集め何とかしないといけないので、すべてが効率化するとは言えないのです。
4-2. 若者や女性を業界に呼び込むための施策
建設業界では、若者や女性が参入しやすい環境づくりが進められています。その一環として、職業訓練校や専門学校での教育プログラムが充実してきています。また、建設現場のデジタル化が進む中で、従来の肉体労働中心のイメージから、ITスキルやデザイン能力を活かせる職業としてアピールする動きも見られます。
特に女性の参入を促進するための取り組みとして、現場での休憩室やトイレの改善、柔軟な勤務時間の導入が挙げられます。これにより、女性でも働きやすい環境が整備されつつあります。
4-3. 外国人労働者の受け入れとその課題
少子化が進む日本において、外国人労働者は建設業界の貴重な戦力です。政府が進める「特定技能制度」により、多くの外国人労働者が建設現場で活躍しています。しかし、受け入れに伴う課題も少なくありません。
言語の壁や文化の違いは現場でのコミュニケーションに影響を及ぼすほか、安全教育の実施においても難しさがあります。また、一部では不当な労働条件で外国人労働者を雇用する問題も指摘されており、労働環境の改善が求められています。
これらの課題を解決するためには、外国人労働者向けの研修やサポート体制の強化が必要です。特に、技術や言語を学べる教育プログラムの整備が求められています。
近年はベトナムだけではなく、インドネシア、スリランカなど各国から集まっている傾向があります。
5-将来の明るい展望
5-1. 持続可能な建設業界を目指す方向性
建設業界は、人手不足という深刻な課題に直面しながらも、新たな技術や取り組みを通じて持続可能な未来を模索しています。特にSDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置いた環境配慮型の建設や、地域社会に貢献するプロジェクトが注目を集めています。
例えば、エネルギー効率の高い建物の設計や再生可能資源を活用した建築資材の導入が進んでいます。こうした取り組みは、環境への負荷を軽減するだけでなく、建設業界の新たな価値を生み出す原動力となるでしょう。
5-2. 技術革新と人材育成の相乗効果
AIやロボ、BIMなどの技術革新により、建設現場の効率化と安全性の向上が実現しています。これにより、労働力不足を補うだけでなく、若者や女性、さらには外国人労働者にとっても魅力的な業界へと進化しています。
また、これらの技術を使いこなすためには新たなスキルが求められるため、教育機関や企業内での人材育成がますます重要になっています。デジタルスキルを持つ若い世代が建設業界に参入し、技術革新と人材育成が相乗効果を生み出すことで、より高度で洗練された建設プロジェクトが実現するでしょう。
5-3. 地域社会と次世代に残す建設業界の未来像
建設業界は単なるインフラ整備の役割を超え、地域社会の未来を築く存在としての重要性を増しています。地域ごとに異なる課題に対応し、地元の人々の暮らしを支えるプロジェクトを進めることで、社会全体の信頼を得ています。
特に、次世代に向けた取り組みとして、環境に優しい都市計画や防災・減災を重視したインフラ整備が進められています。これにより、建設業界は「未来をつくる仕事」として、社会からの認識を変えていくことが期待されています。
6-統括
明るい未来があると心から思っている反面、逆にやりづらくなることも考慮しなければなりません。
例えば監視される事ばかりが効率化され、現場の現実が見えなくなることもあるでしょう。
なんとなくですが、ロボからの奴隷的な働き方になるのではと懸念もあります。
重要なのは、賃金アップ、休日、現場内の雰囲気です。
長い現場は1~2年続くこともあります。その現場内では毎日同じ顔が行きかう事になり、張り詰めた状態であればいくら賃金が上がってもやりがいは無いでしょう。
効率化された新しい時代が、そうした現実の小さなストレスがなくなって初めて良い環境と言えるのではないでしょうか。
政府が作る政策と現場で働く職人たちとでは、お互い求めるものに食い違いがあると思ってます。
そうした現場の声を大にして発信していくのも大事だと思いますね。