仮設工事について
結城 伸太郎
仮設工事は建物を造るのにとても重要な工事です。
工事中の現場でよく見かけると思いますが、主に足場の事を指してます。
仮設工事は建物を造るのにとても重要な工事です。工事中の現場でよく見かけると思いますが、主に足場の事を指してます。飽くまでも仮設…と言われてますが、されど仮設。無くては工事を進行する事さえ出来ない事もあります。
新築工事では図面から拾って部材を納入し、どのような造りで建つかを仮定して組んでいきます。改修では全ての工事が円滑に進むように(手が届くように)組み上げていきます。
一種プラモデルのように組みつけていくのですが、これがなかなか頭を使う仕事なので、素人が簡単に組める訳ではありません。時として高層ビルの新築や改修でも大活躍しますが、かなりの高所作業が予想される為安全がまず確保されます。
ちなみに塗装工事においても必ずと言っていいほど利用する足場ですが「塗装工事代金よりも足場の方が掛かってしまった」なんて事も珍しくありません。
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富嶽百景(三編)「足代の不二」
仮設足場の歴史は長く少なくとも江戸の幕末、かの有名な浮世絵師、葛飾北斎や安藤広重(歌川広重)らの絵にもよく登場しています。
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歌川広重「東海道五拾三次之内 吉田 豊川橋」
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歌川貞秀「真柴久吉公播刕姫路城郭築之図」
昔はこうして木材で足場を組んでいたんですね。
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中国の足場
まぁ中国は今でも竹足場を使用してますが…
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中国の足場
いや、中国だけでなく、他国では今も竹や木材で足場を組んでいるそうですよ。しかしここまでくるともはや芸術ですね。
さて本題から外れましたが、一部写真を紹介してみます。
主に住宅用の足場(ピケ足場)
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ハンマーで打ち込む“くさび緊結式足場”です。通称ビケ足場と呼ばれたりしています。トラックで足場を搬入。
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仮設足場設置
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防塵・飛散防止ネット貼り付け後
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近隣への飛散の心配が無い場合はネットを掛けない時もあります。勿論その方が安く済みます。
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鳥居の仮設足場。
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屋上の防水工事単体の工事だと、このような昇降用階段だけの足場を設置する事もあります。
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他にもローリングと呼ばれる移動式の足場も。ジャッキ面に車輪がついてますので手押しの移動が可能です。天井単体や付帯部の工事にはすごく役立ちます。
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ステージ足場。天井全体の塗装などに役立ちます。
大規模改修用足場(枠組み足場)
別名ビテイ足場(ビティとは考案者のデビッド・イー・ビティの名前から取ったものである )
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大きな工事になってくるとこのような看板や許可証を提示しなくてはなりません。通常足場工事は本体工事の仮設になるので、元請が足場業者になる事はまずありえません。こちらは塗装の仮設なのですが、当社の下請けとしてではなく、元請からの一次下請けとして発注されてるケースです。
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大規模改修の枠組み足場の設置例。住宅と違い、打ち込む箇所が殆どありません。ひたすら積み上げていきます。その他バツ印にブレースが補強されたり巾木が組み込まれたりします。
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千葉県の団地改修時の足場。
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かなり大規模な改修工事でした。当社では外壁塗装工事とウレタン防水工事を施工した物件です。20棟の内4棟施工しました。足場もガッチリ組まれ、あの3.11の大震災時でも倒壊(変形)する事はありませんでした。
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外壁吹付け塗装中。足場があるから塗装できるのです。傷んだ箇所もしっかり見つけられます。
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壁つなぎ設置。高層になればなるほど危険が伴いますが、建物の躯体にこうした緊結用壁つなぎを入れることで倒壊を阻止しています。ドリルで穴を開けアンカーを挿入し、それに壁つなぎのプラグをねじ込みするのが一般的です。解体時はシーリング材などを充填し、壁と同じ塗料で仕上げます。
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マンションの改修時の足場。高層マンションに足場が組まれると一つの芸術作品に見えます。仮設エレベータが無かったので共用階段やエレベータを拝借して上り下りしてました。
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栃木の医療施設改修時の足場。約5,000㎡。ここはほとんど手塗りだった…。
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綺麗に塗装した後の解体は一番の楽しみです。施工前と施工後の全景を撮り比べると本当に感動します。
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マンション屋上から千葉の広大な景色を眺める。高所作業は怖いですが、こうした景色を特等席で見られるのは嬉しいです。塗装工事のみならず各種工事がもっとも容易に作業できるのが、以上の仮設足場です。
可搬式吊ゴンドラ
ゴンドラは屋上がある建物には殆ど設置が可能です。逆に勾配屋根やパラペット、斜壁がある建物には設置が困難な場合があります。事前に設置可能か調査してから取り付けます。
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仮設用のゴンドラです。一人乗りタイプのチアー型と呼ばれるものです。ワイヤーを電動式のモーターが巻き取る仕組みになってます。
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様々なシーンで活躍できる優れものです。特に大規模の改修までいかない、打診調査やシーリング、また窓ガラスのクリーニングにも活躍しています。ただ上下スライドするだけなら高層低層問わず使用でき、且つ仮設足場の1/10のコストで設置する事も可能です。設置も約1時間と容易です。
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箱型のゴンドラです。チアー型と違い2人~3人位まで乗る事が可能。ある程度大規模の改修でも活躍できます。
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青丸内にゴンドラが居ます。上下スライドのみしか出来ませんが、上部に特殊なレール状の梁を仮設する事で上下左右の移動が可能になります。
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外壁塗装中。チアー型も箱型にも、ワイヤーだけでなくライフロープと呼ばれる保険用のロープがあるので落ちる事はまずありません。しかし風にあおられると大変危険なので注意が必要です。
基本的にゴンドラを設置~使用する時は、2人ペアで行うのが望ましいです。一人でやれなくもないのですが、何かあった時の緊急時に対応できないし、屋上へ行ったり下へ降りたりと、何かと時間が掛かり効率が悪いです。
高所作業車
ハイライダーにもブームの長さに種類があり、建物の高さで各種対応します。電気工事などでもよく見かけます。一番先に作業床というBOXが付いており、そこで全操作が可能になります。
大抵安全制御が付いてますので、荷重のせいで転倒したりはありません。ゴンドラ以上に使い勝手が良い昇降設備ですが、2t車以上の車が入れない場所の施工は困難になります。価格もゴンドラよりも割高です。
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外壁洗浄中
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高所作業車でサイロ塗装中
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外壁補修中
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外壁補修塗装後
こういった部分的な補修には高所作業車がすごく活躍します。例えばこの補修の為に足場を組むとコストが掛かる上に組立~解体と余計な工期を使いますね。ゴンドラも設置可能でしたがゴンドラを使うほどの補修量じゃない上に、低層タイプの大型デパートなので外周の移動が無駄でした。
よって高所作業車での補修が一番低コストで工期短縮できる手段でした。工程管理でクリティカルパスを出すには、こういった仮設面でも色んな方法を熟知しておくと楽です。
親網ロープ
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山の山頂にあったお堂。年末年始の参拝や地区行事で使っている建物。足場の設置は勿論高所作業車なんか入って来れません。こういう時は原始的ですがロープのみでの施工になります。
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上部の棟にロープを固定し作業しています。
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ケレン中
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エポキシ錆止め下塗り中。ハシゴもロープも塗料も道具も…結局全部背負って荷揚げしました。登りで40分は掛かります。毎日登山してからの作業なので大変でした。
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上塗り施工完了。手塗りでキッチリ仕上げました。屋根の先端にあるのが六角堂によくある「鑢盤宝珠(ろばんほうしゅ)」なのかな?実際は寄棟ですが、棟仕舞いは胴で出来ていたので塗装していません。
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鐘突き堂もしっかり施工しました。空が近いです…。
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他にもロープを使って屋根を塗装するケースは多々あります。歴史ある普通の住宅だと屋根の勾配が急なのが多いので、その都度足場にするかロープか悩みながら施工してます。
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ロープで塗装中。
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棟の両端の獅子口に親綱を掛け、安全帯やロープを引っ掛けて施工しました。
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甲斐あって手塗りでしっかり施工する事ができました。全面にエポキシ錆止めも下塗りされてます。
このように「仮設」だけでも様々な手法があり、その都度建物や形状によって一番最適なものを採用しています。むしろ知らないと損することばかりです。ただし、使い方を間違えると死に直結する大変危険なものであると言う事を認識していただきたい。
「安全」と分かっているから使用するのであって、決して無茶をしている訳ではありません。どんな仮設も安全を第一に考案されたものばかりなのです。“たかが仮設・・・されど仮設”大事なことなのです。