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養生こそ塗装の極み。養生の工程

結城 伸太郎

塗装工事において最も重要な作業。それが【養生作業】です。養生作業とは、塗装しなくてもよい部分、塗料が付着してはならない部分を、特殊なビニールなどで覆う作業です。

車の塗装でもよく見られるのが新聞紙やマスキングテープで覆う作業です。住宅塗り替え時の外壁塗装の場合は主に、窓、軒天、床面、付帯部などです。簡単なようで実はとても奥が深く、こまい作業となります。

手が器用な方ほど上手な傾向にあります。使う道具はまずマスかーといわれるビニールのスカートがついた巻物、そしてガムテープです。ガムテープは25mmのものが多く使われます。

外壁・屋根塗装で行われる養生の目的

外壁塗装の養生の目的は、主に2つあります。養生によって塗装の出来栄えも左右されるので、適正な方法で行うことが大切です。

ちなみに、塗装や土間コンクリ―トの打設において「乾燥養生」という言葉を使いますが、これはまったく違う意味となります。(完全乾燥させるための養生期間を指す)

■塗料の飛散を防ぐ

一番の目的は、塗料の飛散を防ぐことです。塗料は液体なので飛び散ったり垂れ落ちたりして、施工中に建物や周囲を汚してしまいます。

塗装している過程でそのようなことが起きると、仕上がりに影響がでたり、ご近所の方とトラブルになることもあるので、養生はとても大事な作業と言えます。

■塗装が不要な部分を守る

窓枠など塗装が不要な部分には、塗料がつかないように専用のテープを使って養生します。

養生をしないと塗装した部分としてない部分の境目が、曲がっていたりガタガタになってしまいますが、しっかり養生をするときれいに仕上げることが可能です。

どのような道具を使い養生するのか?

■養生用ポリシート

養生用ポリシートとは、ポリエチレンで作られた透明なビニールシートで、窓に塗料が付かないように使用されます。

一般的なビニールシートよりも大きく、塗料が付いて乾いても落ちにくいので、周囲が汚れるのを防ぐことが出来ます。

■マスキングテープ

養生用ポリシートを貼る時に使用されるテープで、粘着力が弱いため、剥がしやすくテープの跡が残ることもありません。塗装のみならずシーリングの打ち替え時にも必ず使用します。

■テーププライマー

テーププライマーは、粘着力が弱いマスキングテープでは貼り付かない箇所に、密着性を高めるために使用するものです。主にコンクリートや凸凹したところに用いられます。

■マスカー

養生用ポリシートとマスキングテープの機能が一体化したもので、貼るだけで養生できる便利なアイテムです。
シートを抑えながらテープを貼るという作業がいらないので、作業時間が大幅に短縮されます。

■ノンスリップマスカー

ノンスリップマスカーとは、マスカーに「滑り止め機能」がついたタイプのものになります。

これを使うことで足元が滑りにくくなるため、安全面を考慮して屋根や玄関、ベランダなどに用いられることが多いです。

■室外機専用シート

エアコンの室外機の養生に使われる専用のカバーです。

通常のポリシートで室外機を覆うと排気ができず、一酸化炭素中毒になる恐れもあるため、通気性のある専用のカバーを使用します。

■カーカバー

車やバイクを一台丸ごと覆えるカバーで、種類は厚手のタイプから薄手のタイプまで様々です。また、素材もビニールタイプや不織布製のタイプなどがあるため、車や環境にあったものを選ぶようにしましょう。

弊社では通気性の良い不織布のカバーを使う事が多いです。

■飛散防止ネット

飛散防止ネットとは工事中に見る、家と足場を全体的に覆うメッシュシートのことです。

通気性がありながら、風の影響も考量されているのが特徴で、高圧洗浄の水や塗料などが飛び散るのを防ぐことが出来ます。また、作業員の足場からの落下事故も防ぐことが出来ます。

養生の価格相場

住宅塗装の場合、養生費用を計上していない会社の方が多いかと思います。

もし、別途「養生費用」を書いているとすれば、車の養生や植栽の養生などを指す場合もあります。

養生をどこまでするかは職人さんによりけりなので、養生費を○○平米で○○円と記載する事は正直難しいかと思います。

ただし、公共工事になると標準内訳に養生費や共通仮設費など項目がありますが、その場合は内部の通路床の養生やエレベーターの養生など、共通して使用して汚さないようにするための費用として計上されています。

養生の注意点

下記のようなトラブルにならないためにも、通達や対策がとても重要です。

■窓が開けられない

施工中は窓枠やサッシなどにも養生をするため、窓を開けることができない場合があります。

特に夏場は、窓を開けられないと生活がしづらくなることもあるので、気になる方は業者に相談してみましょう。

また、窓を閉め切って家全体を養生ネットで覆っているので、洗濯物を外に干すこともできません。

■エアコンを使用できない

エアコンの室外機も汚れないように養生することがあるので、エアコンが使用できなくなる可能性があります。

エアコンの使用については、業者によって対応が異なるので事前に確認しておきましょう。

■植物が枯れてしまう恐れがある

施工中は家全体を養生ネットで覆う為、庭や家回りにある植物にもネットがかかり、日光が当たりにくくなってしまいます。

そのため、一般的な住宅の場合は2~3週間ほど植物に十分な日が当たらず、枯れてしまう恐れがあります。

■ボイラーが故障、爆発

ボイラーの煙突や排気口をビニールで塞いだまま稼働させると、不完全燃焼を起こし故障します。火災の原因にもなりますので絶対に塞いではいけない箇所です。

実際の養生作業を解説!

窓をマスカーとガムテープを使い養生します。左の写真は、ピンと張られてとてもキレイですね。無駄な貼り方をすると右のようになってしまいます。

マスカーは、ビニールを広げると550mmや1100mmなど長さが様々あります。それを窓の大きさに使い分けるのがセオリーです。このような窓ですと縦の長さで約400mmほど。

なので、上下左右にマスカーを使ってしまうと上下どちらかが多く残ってしまいます。これでは無駄ですね。

そのため、上と左右のみ使って、下はガムテープのみで張ると先ほどのピンとなるように張れるわけです。言葉ではなかなか伝えにくいものですね^^;

それとバルコニー出入り口のような掃き出し窓は、通常高さが1800mmほどあります。その際は上下左右に550mmマスカーを張っても足りないので、二重に使ったり、1100mmのマスカーを使ったりします。

それでもやはりマスカーは高いので(ケチ)、このような養生シートを使う場合もあります。「コロナ養生シート」という名前で売ってたりします。

うまく使いこなすには何気に熟練度が必要なんですよ。

ここで一番注意すべき点はバルコニーによくあるエアコンの室外機です。この室外機は使用してなければビニールで覆っても何ら問題ないのですが、もし覆ったままお客様がエアコンを使用したならば、エアコンか室外機は空気を循環できず故障してしまいます。

左のようなこのまま使用されたらアウトです。なので、塗装する直前までは、右の写真のように上に巻いておけるように養生しておきます。これも準備段階が必要です。

上にまいておいて、いざこの周辺を塗装する際にスカートのように下に降ろし、塗った後はすぐにまた上にまき上げます。塗装工事だけでもこんな何気に手間のかかる小細工がたくさん潜んでいるんですよ^^

最近は、このように通気性の良い繊維状の室外機専用カバーも売ってたりするので活用してます。アイデア商品です。

最後に、お風呂を沸かす湯沸かし器や給湯器の煙突となる部分も同様の注意が必要です。よくマンションの塗装工事をしていると金属のフードが壁から煙突が飛び出ている事があります。こんな感じ。

当然これを塞げば…中の湯沸かし器は爆発してしまいます。ボイラーも同じです。爆発します。絶対に注意が必要です。爆発といってもケガするようなものではなく、中の器物が破損して故障する程度です。

が、もしかすると本当に火事になるような爆発もあるのかもしれません。私はそこまでの爆発は見た事ないので何とも言えませんが…。とりあえず上写真のような煙突は使用中はとても熱くなるので、ビニールで巻いたらすぐ溶けてしまいます。

右の写真のように、アルミホイルで養生したりもするんです。アイデアですね!

もちろんこの養生も作業する瞬間だけ巻いてます。

このように、塗装工事においては養生作業が不可欠です。必ず施工する手順です。なので、この養生作業を極めてこそ、本当にきれいに塗れる熟練者になると思ってます。塗装職人になったらまずは養生を徹底的に覚えてくださいね!

まとめ

養生は塗料の飛散を防ぎ、建物や周囲が汚れてしまわないにする目的があり、さらに塗装の仕上がりも左右される大切な作業になります。

むしろ養生を極めてこそ、本当の塗装職人と言える重要な作業工程です。工事中のトラブルを防ぎ、塗料本来の機能を発揮するためにも、適正な道具と方法で養生を行うことが重要です。

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