モニエル瓦の特徴とメンテナンス(塗装、葺き替え)の費用
結城 伸太郎
建物は常に紫外線や雨風などの外気にさらされているため、定期的にメンテナンスをして建物を守る必要があります。
特に屋根は劣化するスピードが早いので、適正なタイミングでメンテナンスを行う為にも、屋根材の特徴ついて知っておくことは大切です。
このページでは、モニエル瓦の特徴やメンテナンス費用について紹介します。
モニエル瓦について
モニエル瓦は、主にセメントと砂を原料とした瓦で、正式には「乾式コンクリート瓦」と言い、セメント瓦の一種になります。
本来「モニエル瓦」という名称は、日本モニエル株式会社から販売されていた屋根材の商品名でしたが、高いシェアがあり広く普及したため、一般的な呼び名として定着しました。ただ、現在は生産中止となっているため、使用されることはありません。
■メリット
モニエル瓦のメリットは耐震性、断熱性が高い点です。主な原料がセメントと砂なので、日本瓦よりは軽く建物への負担も軽減できます。
また、デザイン性もあり、様々な色や形状のものがあります。
■デメリット
メリットで日本瓦よりは耐震性があると紹介しましたが、やはり金属屋根に比べると重量があるため耐震性は低下してしまいます。
さらに、モニエル瓦は現在生産されていないため入手が難しく、破損しても交換ができない可能性もあります。
耐用年数とメンテナンス時期
モニエル瓦の耐用年数は約30年で、約10年を目安に塗り替えが必要です。
モニエル瓦の劣化症状
■ひび割れ
ひび割れは経年劣化によって起こり、防水性が低下している状況です。放っておくと瓦の落下や雨漏りの原因になるので、防水テープや接着パテなどで補修を行います。
■瓦のズレ、漆喰の割れ
瓦のズレは雨や強風などが原因で発生し、症状が進むと瓦を固定している漆喰にも影響を及ぼして、割れや滑落につながることがあります。
さらに、ズレや割れが起きたところから水が浸入して、雨漏りが発生してしまう恐れもあります。
■塗膜の剥離
剥離は紫外線や雨風などの影響で、塗膜が劣化している状況になります。塗膜が劣化すると防水性が失われて、雨漏りにつながる場合があります。
■チョーキング
チョーキングとは手で触ると白い粉がつく現象で、塗膜の保護機能が低下しているサインとなります。
放っておくとモニエル瓦に水が染み込み、ひび割れや雨漏りが発生してしまう可能性があるので塗装する必要があります。
メンテナンス方法と費用相場
■塗装
モニエル瓦はセメントに特殊な塗装膜で形成されており、トタンなどと同様の塗り替えだと剥がれてしまう恐れがあります。
まずはしっかりとスラリー層を除去し、塗料が密着するような下地調整をしてから塗装する必要があります。瓦は形状が複雑なため、吹付工法にて施工する事をお勧めします。
あまりにも酷い層破壊が起きていたら、カチオン系防水材で被覆してから塗装するか、アクリルゴム系防水材で固めてしまう方法もあります。その場合は剥離の心配はなくなります。
単価の相場は、おおよそ以下の通りです。
・通常の塗装工法:平米2,500円~3,000円
・防水材での施工方法:平米4,000円~5,000円
■葺き替え
瓦からスレート屋根、トタン屋根にする場合は瓦の撤去が必要なため、下地のルーフィングの貼り替えも必須となります。
その場合雨を守るシートが一時的になくなりますので、天候による工程のすり合わせが非常に重要です。仮に、防水でシートで被う場合もその雨仕舞には神経を使います。
葺き替え費用は、既存瓦の撤去費と処分費に加え、仮設足場費や楊重費などが掛かってきます。また、なんの素材で葺き替えするか?により大きく異なり、30坪で150万~200万ほどとなります。
まとめ
モニエル瓦は日本瓦に比べて耐震性に優れており、さらに断熱性も高い屋根材です。ただ、現在は生産中止となっているため、破損をしても交換が難しい場合があります。
劣化症状を放っておくと滑落や雨漏りの原因にもなるので、建物を守るためにも適正な時期に塗装やカバー工法、葺き替えを行うようにしましょう。