打診調査
結城 伸太郎
名の通り打診用のハンマーで外壁を叩き、浮き部を探していく調査。同時に目視によりクラックも見つけながらラッカースプレーなどでマーキングしていきます。
マーキングされた箇所は下地処理が必要と判断され、塗装改修前に必ず何かしらの処理を行います。浮き部にはピンニングと呼ばれる注入、クラックには自動低圧による注入工法があります。
いずれもRC造の建物の改修では必要不可欠な重要な工程なので無視できません。では画像を元に解説していきます。
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打診棒による診断01
打診棒を持ちながらタイルの浮きを診断しています。
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打診棒による診断02
浮きがあると空洞があるような「カラカラ」した音になります。
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打診棒による診断03
見つけたら図面に書き込んでいきます。この時出来る限り2名で行うようにし、一人は打診もう一人は書き込みに分かれると効率が良いです。打診棒には←の様な物や、頭がカボチャ玉やパチンコ玉の形状をした棒など様々あります。
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打診棒による診断04
目視でわかる範囲は積極的に診断します。左の写真は完全にタイル内部を水が走ってますね。ツララ状のエフロがそれを物語っています。漏水に直結しそうな症状です。
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浮き部のマーキング01
タイルとは別にRC造等の塗装改修ならば、図面に書き込むよりも躯体そのものにマーキングした方が早いです。マーキングは通常ラッカースプレーなどを使ってます。左は浮き部をマーキングした写真です。
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浮き部のマーキング02
浮き部にはエポキシ樹脂という、ドロドロした接着剤を注入します。注入後完全硬化する前にアンカーピンという金物を挿入します。
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浮き部のマーキング03
アンカーピン挿入後。アンカーピンは表面のモルタルと躯体を結合する為の役割をしています。
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浮き部のマーキング04
極端ですが図で表すとこんな感じです。黄色の部分がエポキシ樹脂。つまり躯体を穿孔し、アンカーピンを挿入しエポキシ接着剤で浮き部と結合する寸法。浮き部を敢て撤去せず躯体に復元接着させるのが目的。
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浮き部のマーキング05
浮き部とクラックのマーキング。上記のような浮き部とは違い、クラックのマーキングはライン状に標します。これでわかりやすく長さを特定できます。
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浮き部のマーキング06
クラックのマーキング。シルバーのラッカースプレーを使ってます。
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浮き部のマーキング07
(エックス)クラックのマーキング。バツでもクロスでも伝われば何でもいいです(笑)
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浮き部のマーキング08
クラックに浮きも確認された場合はせん断クラックである可能性が高いです。その際はクラックに沿って浮き部を斫って(はつって)しまいましょう。
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浮き部のマーキング09
ダイヤモンドカッターで切れ目を入れて、ピックなどの斫り工具で躯体を現します。
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浮き部のマーキング10
躯体が出てきたら自動低圧注入で済むのか、高圧注入(手動)かを選定します。これは自動低圧注入で処理した様子。
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打診調査のやり方は様々で、ゴンドラや高所作業車を用いて診断したり、足場を掛けてから診断したり、時には赤外線カメラで診断する事もありますが、実際にハンマーで叩いた方が確実です。ゴンドラも高所作業車も特殊な免許が必要なので、安全の為にも取得する事をお勧めします。
こういった建物の診断は通常有料になります。診断は工事提案書や診断結果の書類作成費も含まれるので決して安くはありません。
口頭だけで言えないのが事実です。ただしその後の改修工事も依頼された場合は、見積もり書に含まれているか、又はサービスになるかもしれません。